前回はなぜ熱処理が広く利用されているのか、その概要をお伝えしました。今回は実際に材料や部品に対して熱処理を施すときに押さえておくべきポイントを解説します。
・素材は鋼(鉄系材料)を使用する。
部品の加工後に熱処理を行うことができるのは基本的に鉄を主成分に構成され、指定量以上の炭素を含む鋼と呼ばれる素材です。ステンレスも主成分は鉄であり、種類によっては熱処理を施すことが可能です。しかし、いわゆる炭素鋼ほどは一般的ではなく、処理も高額になりがちです。
・必要な硬度を検討する
変形や破損、耐摩擦性などを考慮し、部品や治具に必要な硬度を検討します。必要な硬度によって、熱処理に適した材質が変わってきます。
・寸法変化に注意する
熱処理をすることによって内部の組成に影響が出るため、処理後の部品には少なからず寸法の変化が発生します。その変化が部品を使用するにあたって許容できる範囲内であれば問題ありませんが、高精度を要求される部品の場合は熱処理後に研磨をするなどの対応が必要になります。
寸法変化が好ましくない場合、要求される硬度がそれほど高くないのであれば、最初からある程度の硬度を持つ材料で加工する方が低コストでできる場合があります。
上記のようなポイントを意識しながら、熱処理を加工の選択肢に入れると、対応できる幅が広がりますので、ぜひご検討ください。