こんにちは!金属材料の活用や治具・工具・製品の開発コラムをお届けしている山城です。
今回はSS400やS45Cと比べると少し聞きなれないSCM440という材料について紹介します。
治具や工具を作るとき、部品の製作を検討している際にSS400やS45Cでは硬度が足りないといったこと、ありますよね。そんなときは、まず焼き入れが良くできる材料を使おうと考えますが、ではどんな材料が良いのかなかなか選ぶのは難しいですよね。
個人的におすすめしたいのはこれから紹介するSCM440です。今回はいろいろな意味で万能な機械構造用合金鋼、SCM440を使うメリットと、使うときのポイントを紹介します。
目次
1.なぜSCM440をおすすめするのか
焼き入れが必要な場合にSCM440をおすすめするのは、以下の3つの理由からです。①しっかりと硬さが入り、粘り強さも期待できる。②コストパフォーマンスに優れている③流通性が良い。以上です。それでは一つずつ具体的に説明していきます。
しっかりと硬さが入り、粘り強さも期待できる
焼き入れする材料の場合、何と言っても大事なのはしっかりと焼き入れできるかということです。焼き入れのパフォーマンスが悪ければ、その材料を選ぶ意味がありません。
SCM440はクロムとモリブデンを含んでいるため内部までしっかりと硬さが入り、また炭素量も約0.4%と比較的多く含有しているため、HRC55~HRC60程度までは問題なく硬度をあげることができます。
クロムやモリブデンは、材料を粘り強くする特性も持っているため、硬度を上げながら高い靭性を保つことができます。
コストパフォーマンスに優れている
焼き入れできる材料は、多くの場合希少な元素を含んでいるため高額であると様々な書籍やウェブサイトで紹介されています。確かにその側面はあるのですが、それほど高額ではないと考えることもできるのではないかと思います。
SCMはクロムとモリブデンを含んでいますが、驚くほど材料代が高いというわけではなく、最も一般的で広く流通しているS45Cと比べても1.2倍程度の材料費です。
加工費と比べれば鉄鋼系の材料費は非常に安いので、試してみて損はない材料ではないかと思います。
より高額な材料になると、後で言及する流通量の関係等もあり、SKやSKS、SKDといった材料は一気に材料費があがる場合があるので、そういった意味でもまずはSCMから検討するのが最善手であると考えます。
また、加工性が良いというのもポイントとして上げられます。一般的な鉄鋼材料のSS400やS45Cと比べると、若干削りにくいですが、SUS304に代表されるステンレス鋼よりは削りやすく、S45Cと比べて1.2倍程度のコストで済みます。
多く使われているSS400やS45Cとそれほど変わらない価格で加工を考えられるというのは安心材料の一つになりますね。
流通性が良い
材料を選定するうえで、様々なサイズが流通しているか、注文したらすぐ入手できるかという流通性の問題は非常に重要です。
なぜか、商品のラインナップとして売られていても、普段は在庫しておらず届くのは2週間後、というようなことになったら、それだけで納期が大幅に遅れてしまいます。
鉄鋼材料には、カタログには載っていても実際には常時在庫しているわけではない材料が多くあります。その点SCM440は、常時在庫が豊富にあり、またサイズのラインナップも豊富なため、大抵注文してから翌日か2日後ぐらいには材料が届きます。
納期の短い試作などの場合、注文してからすぐ届くというのは非常に重要ですよね。
寸法変化には注意
熱処理(焼き入れ・焼き戻し)のパフォーマンスのバランスが良いSCM440ですが、熱処理後はある程度の変形が発生します。形状や材料の加工状態にもよりますが、反りや曲がり、穴の部分の寸法変化は避けられません。
0.1mm以下の公差を必要とするような比較的精度の高い仕上がりが必要な場合は、熱処理後に研削などを行って高い制度に仕上げるか、材料費は上がるけれど熱処理後の寸法変化の少ないSKD11のような材料を使うかなど、事前に対策を検討しておく必要があります。
熱処理後の研削などの仕上げ加工は、コストが高くなりがちです。材料費と追加の加工費を比べてトータルのコストでどちらが有利なのか、検討してみてください。
まとめ
焼き入れをする場合の材料としてSCM440の材料の優れた点を紹介しました。
より詳しく治具や部品の材料選定について聞いてみたい場合、どんな材料を選んで良いかわからない場合はお気軽にご相談ください。