鉄鋼に対する代表的な処理の一つである焼き入れ。
部品を硬くしたり、強度を高めるためにするものだということは何となくわかっている方も多いと思いますが、専門用語続出で結局どういうことなの?と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
今回はそんな焼き入れを、できるだけ簡単に、ポイントを押さえて解説します。
数回に分けて、より詳しく解説していきますので、まずは大雑把なイメージを掴んでください。
目次
焼き入れとは何か、何のためにするのか
なぜ熱処理(焼き入れ)をするかというと、低価格で時間をかけずに、鉄鋼材料を何倍もの強度にすることができるからです。
最も一般的な鉄鋼材料のSS400と比較すると、HRC60まで焼き入れした鋼材の引っ張り強さは、最大でおよそ7倍にもなります。
それだけ、引っ張りや曲げ、ねじりといった荷重や応力に対して強くなるということです。
どんな材料に焼き入れできるのか
焼入れできるのは基本的に、0.2%以上炭素が含まれている鉄鋼材料もしくはステンレス材料です。炭素を別の方法で添加するなどの特殊な熱処理をする場合を除いて、炭素量の少ない鉄鋼は焼き入れをしても硬くなりません。
具体的に焼き入れできる材料となると、非常に多くの種類があり、どの材料を使えばよいのか戸惑ってしまうことも多いかと思います。しかし機能(硬度・機械的性質)と価格で検討すればおのずと定まってくることがほとんどです。ただ、一度では紹介しきれないので別の機会に紹介したいと思います。
焼き戻しって何?
厳密にいうと、焼き入れだけして使用する部品はほとんどなく、ほぼ必ず焼き戻しという工程をセットで行います。
焼き入れをした時より低温で再度熱を加えることによって、粘り強さや耐衝撃性が増します。この工程のことを焼き戻しと呼びますが、実際に処理を依頼するときに焼き戻しという言葉は使わないことも多いです。
焼入れの価格は
焼入れの価格は、材料のサイズや処理の個数に大きな影響を受けますが、ほとんどの場合機械加工や材料費と比べると安価です。
1個の場合だと相対的に、段取りに対する手間がかかってしまうので、それだけで数千円という場合もありますが、10個、100個とまとまれば数十円になることもあります。
焼入れの納期は
これも数量やサイズによりますが、手のひらサイズで100個程度までであれば、1日半~2日程度で終わることが多いです。
切削加工や研削加工等他の加工と比べると、比較的短い納期で対応してくれることが多いです。
焼入れの問合せ方法は
焼入れの問い合わせをするには、図面もしくは大雑把でも形状や寸法がわかるスケッチ等と、焼き入れの硬度の指定が必要です。
また、大前提として焼き入れできる鉄鋼材料を処理してもらう必要がありますし、鋼材の種類によって熱処理の方法や時間が変わるので、どの材料を使うのか明記する必要があります。
1個から対応してくれる熱処理業者も多いので、まずは問い合わせてみてはいかがでしょうか。
焼き入れ後の加工はどんなことができるか
焼き入れ後の加工でできるのは、研削加工とメッキなどの表面処理になります。
硬度によっては機械加工できないこともないですが、切削工具の多くは焼き入れ後の硬い材料に対応していないため、全く加工できないか、できても通常の鉄鋼の加工よりはるかに高額になってしまいます。
今回は鉄鋼材料の焼入れの基本について紹介しました。焼き入れは奥が深い技術ですが、自分が何を求めて焼き入れをしようとしているのか考えると、そこまで難しく考えなくても答えが出てしまうことは多くあります。
もし、どの材料に焼入れすれば良いかわからない、こんな部品に焼き入れできるの?焼き入れ前後の加工はどうすれば良いの?など、疑問があればお気軽に弊社までお問い合わせください。