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SS400を使うときに押さえたい5つの特徴

鉄の代表的な材料といえばSS400ですね。とにかく金属なら何でも良いという場合は、あまり深く考えず材料代の最も安い鉄を選ぶということも多いでしょう。
ですが、どんな場合でもSS400なら安く治具や部品が作れるというわけではありません。SS400の特徴をしっかりと把握し、適切な場面で使うことによって、その性質を最大限に活かし、コストダウンにつなげることができます。
身近でよく使うからこそ、おろそかにしてはいけないSS400の特徴を紹介し、より良い材料選択をしていただければと思います。

そもそもどんな時に鉄を選ぶのか

とにかく材料費を安くしたい時
鉄は金属のすべての材料の中で最も安価な材料です。こちらのコラムでも紹介しているアルミやステンレスよりも圧倒的に安いので、材料費を安くしたい場合はまず鉄が選ばれます。

溶接したいとき

炭素を多く含む鉄は溶接できませんが、SS400等の炭素量が少ない鉄は溶接する場合にもよく使われます。ステンレスとはそれほど変わりませんが、アルミよりはかなり溶接しやすく、最低限の設備で加工ができます。

磁石を使いたいとき

一般的に使われる金属で磁性を持っているのは鉄だけと言って良いでしょう。ニッケルやコバルトなども磁性を持っていますが、鉄よりはるかに高価なため工業製品や治具、装置などで使用するのは一般的ではありません。

重さが必要、または重くても問題ないとき

鉄の比重は約7.9です。1㎤の立方体だと7.9gの重量になります。10㎤だと7.9㎏になるので、かなり重いと感じます。ステンレスとはほぼ同じ比重で、アルミの約3倍程度です。
したがって、重量が問題にならない場合や重い必要がある場合に鉄が選ばれます。

SS400の特徴

以上のような鉄の一般的な特徴を踏まえて、SS400の特徴をより詳しく見ていきましょう。

材料代が非常に安い

SS400の最大の特徴は何といっても材料コストの安さです。金属加工で扱う全材料で最も安くキロ単価100円前後です。なので、材料にあまり手を加えない場合や、鉄が得意とする溶接やレーザー加工がほとんどの場合は、その安さを最大限に活かすことができます。

溶接に向いている

SS400は炭素を0.2%程度しか含んでいないため、溶接しやすい材料です。ボルト等での締結ができない場合等でも自由に形状を作ることができます。

ステンレスより削りやすくアルミより削りにくい

切削加工に関してみると、SS400は鉄の中で比較的切削しやすい材料になります。他の素材と比べた場合、ステンレスの代表的な材料であるSUS304よりはかなり削りやすく、アルミ全般よりは削りにくくなります。

焼き入れはできない

SS400は炭素をほとんど含んでいないため、熱処理をして製品を硬くすることはできません。焼き入れをしたい場合は、S45Cなどの炭素を含んでいる材料を使う必要があります。

表面処理をしないと簡単に錆びる(腐食する)

鉄の素材全般に言えることですが、SS400も錆びやすい材料です。常に潤滑油等で覆っている場合は良いのですが、水分があるところはもちろん、空気中でも錆びていきます。したがって治具や装置の部品としては腐食対策をして使うのが一般的です。
鉄系材料の腐食対策としてよく使われるのが、黒染め、亜鉛メッキ(クロメート処理を施したもの、ユニクロなど)、ニッケルメッキ、クロムメッキなどです。

詳細は別のコラムでまた解説したいと思いますが、高い耐食性が求められないのであれば、黒染めやユニクロなどで対応できるでしょう。どちらもかなり安価に処理してもらえます。

SS400はどんな時に使うのが良いか

以上の特徴を考慮して、治具や装置を作る際、どんな場面でSS400を使うのが良いかまとめたいと思います。材料選択の目安としてもらえればうれしいです。

まず、どんな場合でも前提となるのが、材料費を抑えたい場合でしょう。とにかくコスト最優先ということであれば最初にSS400が候補になります。ただし、切削加工の範囲が大きいと相対的に割高になってしまうので、そのような場合は切削加工がしやすい材料を一緒に検討すべきでしょう。

また、安く溶接したい場合も第一候補として挙げられるでしょう。溶接する場合、一番安価にできるのはSS400です。軽さや耐食性が求められる場合は、アルミやステンレスと比較しましょう。
安く磁性がある材料を使いたい場合もSS400をまず検討しましょう。

SS400の代替となる材料

切削加工が多い場合

切削加工が多い場合はより削りやすい素材への変更が検討されます。鉄にこだわらないのであれば、アルミが圧倒的に削りやすいので、アルミへの変更を検討しましょう。アルミは代表的なものは鉄より強度が劣りますが、最近は強度の高いものも増えてきています。
A2017、A2024、A7075などは、SS400の約半分から同等以上の強度を持っていますので、必要な強度に応じて使い分けることもできるでしょう。強度、コストともにA7075>A2024>A2017という順番になります。
また、ある程度切削する範囲がある加工品については、まず間違いなく総コストにおける材料費より加工費が占める割合が大きくなります。一概には言えませんが加工代が材料代の5倍から10倍というのは当たり前です。
鉄である必要がある場合は、快削鋼と呼ばれる削りやすい成分を添加したSUMという材料を使用しましょう。

錆び(腐食)に強くしたい場合

SS400にメッキを施すことで錆びにくくすることはできますが、表面のメッキに傷が付いた場合やピンホールがある場合など、素地が露出するとそこから腐食が進行してしまいます。
より腐食に強くしたい場合は、ステンレス材料への変更が真っ先に考えられます。最も代表的なステンレス材料はSUS304ですが、削りにくいので、切削する範囲が広い場合や難易度の高い切削が必要な場合はSUS303が使えないか検討しましょう。磁性を持たせたい場合はSUS430を使うことができます。

おわりに

最近は材料の進歩が目覚ましく、強度が必要ならとにかく鉄を選べば良いという場面は少なくなってきました。必然的にSS400もとりあえず無難に選んでおけばいいというものではなくなってきています。使うシーンを考えながら、最も適した材料選択を検討してみてください。

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