ステンレスの代表的な鋼種であるSUS304とSUS303。どちらかというとSUS304の方が一般的に知られていますが、これら二つの素材にはどのような違いがあり、どのように使い分ければ良いのでしょうか。価格や、様々な加工の適性、具体的な使い方について説明します。
SUS304とSUS303以外の材料についても特徴や使い方を知りたい方は3分でわかるステンレス加工の材料選択。覚えるのは4種類だけ!もご覧ください。
目次
SUS304とSUS303はオーステナイト系ステンレス
SUS304とSUS303はどちらもオーステナイト系ステンレスと言い、ニッケルを含んだ耐食性の高い材料です。どちらも基本的に磁性はなく、磁石には付きません。ただし、材料を製造する際や、加工する際に大きな力がかかり、結晶構造が変化した場合はわずかに磁石に反応することがあります。
SUS304は一般的な材料として非常に多く流通していて、簡単に入手できます。ホームセンターなどで切り売りされているステンレスの丸棒はほとんどの場合SUS304です。
一方SUS304に硫黄やリンを添加して削りやすくしたものがSUS303ですが、こちらはSUS304ほどは流通していません。入手する場合はモノタロウやミスミといった工具や治具、機械の通販サイトで入手するか、専門的な材料業者に問い合わせる必要があります。
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材料費ではSUS303のほうが若干高い
材料費で考えると、硫黄やリンが添加されているSUS303の方が、1~2割程度高くなります。
切削加工が必要ない場合は、耐食性も高いSUS304を選択しましょう。
SUS304は耐食性、溶接性に優れているが、切削性はあまり良くない
SUS304は耐食性に優れているため、常に水に触れるところなど、腐食(錆び)が問題になる環境で使用される材料としてまず候補に上がります。また、溶接も比較的しやすく、鉄とそれほど遜色なく溶接することができます。
ただし、鉄と比べると粘り気があり、削った面が硬くなる加工硬化という現象を起こすため、切削にはあまり向いていません。したがって、切削する際のコストは、形状にもよりますが鉄の1.5倍から2倍ぐらいになります。
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SUS303は耐食性に劣り、溶接には向かないが、切削性は良好
一方SUS303は、耐食性に劣り、溶接には向きませんが、切削性に優れています。鉄の代表的な材料であるSS400やS45C(S50C)といった材料と同じような条件で削ることができるので、加工費を押さえられます。
特に、深い穴や溝、ネジ、ポケットなど切削しにくい部分が多くあるような加工品の場合は、SUS303の使用をおすすめします。材料代はSUS303の方が1、2割高い場合が多いですが、削りやすさは全く違うので切削加工の場合はまずSUS303が使えないか検討しても良いでしょう。
SUS303は溶接には向きません。削りやすくする成分として含まれている硫黄が割れなどの溶接不良の原因となるためです。溶接したい場合は材料をSUS304等に変更する、ネジなどで取り付けられる形状に設計変更するといった対応をするのが良いでしょう。
水分に触れる環境での使い分け方
SUS303は、ステンレスではあるものの常時水に触れるような環境での使用はあまり勧められません。
屋内で湿度がそれほど高くない場合や、屋外でも短期間で濡れてもすぐ乾くような環境であればそれほど大きな問題にはならないでしょう。
しかし、常時水に浸かっているような環境だと1年程度で腐食が発生することもあるようです。
中長期間水に晒されるような環境の場合はSUS304を選択した方が無難でしょう。
また、ステンレスは塩分に対して腐食しやすい性質を持つので、海中や海に近いところではより耐食性の高いSUS316等を検討する必要があります。
SUS303は焼き付きに強い
あまり知られていない特徴ですが、SUS304は焼き付きしやすい素材です。焼き付きとは、金属同士が摩擦したときに、表面が密着して取れなくなってしまうことです。
SUS303は焼き付きが起こりにくい特性を持っているので、金属同士が摩擦するような面にはSUS303が向いています。
用途に合わせて材料を選択することが大切
よく似た性質を持つSUS304とSUS303ですが、使い方や加工の仕方によって向き不向き、できあがりの際のコストが大幅に変わります。加工コストが合わない、部品がすぐに腐食するなどの問題がある場合は、ぜひ素材から検討してみてください。